音楽漫画の歴史を塗り替えると言っても過言ではないほど、ファンからは力強い支持を得ている作品『BLUE GIANT』。
なぜ『BLUE GIANT』はこんなにも漫画好きの人気を集めるのでしょうか?今回は『BLUE GIANT』人気の理由や魅力を6の項目に分けてマニアックに解説したいと思います。
原作紹介
まずは『BLUE GIANT』の原作を紹介します。『BLUE GIANT』は、大の日本での活動を描く『BLUE GIANT』と、欧州での活躍を描く『BLUE GIANT SUPREME』の2編に分かれています。
BLUE GIANT
あらすじ
ジャズに心打たれた高校3年生の宮本大は、川原でサックスを独り吹き続けている。雨の日も猛暑の日も毎日毎晩、何年も。
「世界一のジャズプレーヤーになる…!!」
努力、才能、信念、環境、運…何が必要なのか。無謀とも言える目標に、真摯に正面から向かい合う物語は仙台、広瀬川から始まる。
BLUE GIANT SUPREME
あらすじ
止まるわけにはいかない宮本大は、単身ヨーロッパに渡る。
降り立ったのはドイツ・ミュンヘン。伝手も知人もなく、ドイツ語も知らず、テナーサックスと強い志があるだけだ。
「世界一のジャズプレーヤーになる・・・!!」
練習できる場を探すところから始まる挑戦。大の音は、欧州でも響くのか――
魅力1:真っ直ぐに努力を続ける成長譚
『BLUE GIANT』の魅力その1は、真っ直ぐに努力を続ける成長譚にあります。
主人公の宮本大は、「世界一のサックス奏者になる」ことが目標で、その目標に向かって毎日毎日サックスを吹いています。雨の日も、雪の日も、毎日毎日です。
この日々の努力を描く事が、この漫画の真髄なのだと思います。
©石塚真一/小学館
漫画では主人公の努力は省略して描かれがちです。なぜならば日々の努力のシーンは決して代わり映えのするものではなく、地味に見えるからです。しかし『BLUE GIANT』ではその努力の日々を丁寧にじっくりと描きます。努力こそが目標を達成するための唯一の道であり、宮本大を成長に導く要因なんです。
また、なぜ宮本大は人に恵まれるのか。その理由も彼の努力による影響が大きいのです。大が毎日練習しているからこそ、彼の事を認めて応援したくなる人が増えるのです。彼の身近な人であればあるほど、彼の行っている地道な努力の尊さを理解するのです。
魅力2:一筋縄ではいかない現実
『BLUE GIANT』では、一筋縄ではいかないリアリティも描かれます。
主人公の大は時に馬鹿にされたり、失敗したり、とてもツラいアクシデントに見舞われたりします。
それでも大は日々の練習をやめる事はありません。サックスを吹き続けるのです。
©石塚真一/小学館
どんな困難や、どんな高い壁でも、「屁でもねぇや」と前向きに乗り越えていく姿に、読者は惹きつけられます。
「世界一」になるためには、落ち込んでる時間や考え込む時間は、大には無いのです。
理由3:ジャズに励む仲間とのヒューマンドラマ
『BLUE GIANT』には魅力的なジャズ仲間たちがたくさん描かれます。
『BLUE GIANT』では玉田俊二と沢辺雪祈。『BLUE GIANT SUPREME』ではハンナ・ペーターズとブルーノ・カミンスキとラファエル・ボヌー。全員が非常に個性豊かなキャラクターで、時に大と衝突もします。それでもメンバー同士を強く結びつけるのはジャズへの愛情や執念です。
技術的には成熟しているとは言えない宮本大に、または英語すらまともに喋れない宮本大に仲間が惹きつけられるのは。彼のジャズへの真っ直ぐな心とその努力に惹きつけられるからです。
また大自身もそんな仲間を求めるのです。
特に日本編の2人の仲間である玉田俊二と沢辺雪祈は『BLUE GIANT』でも屈指の人気キャラだと思います。
玉田俊二
玉田と大はもともと、二人の地元の仙台の高校の同級生です。
玉田は大学生活を送るために上京し、ジャズをやるために東京に出た大が玉田を頼って部屋に転がり込んできます。
二人で共同生活を送る中で、夢に向かって毎日努力を重ねる大と、漠然と大学生活を送っている自分との間にギャップを感じ、ジャズドラムを始めます。もちろん玉田は素人です。
そんな中で大とバンドを組もうとしていた雪祈に、素人の玉田をバンドのメンバー候補として紹介した大。雪祈は素人なんて相手にするつもりは無く、軽く玉田をあしらいます。
雪祈に軽くあしらわれた玉田はめげることなく毎日ドラムの練習を続けます。それは大の練習量にも引けを取らないほどのものでした。
©石塚真一/小学館
そんな”素人”で”下手くそ”な玉田と、大・雪祈の関係性には胸が熱くなる事間違いなしです。
沢辺雪祈
沢辺雪祈はジャズピアニスト。4歳からピアノを始めており、やや傲慢な性格でありながら実力は超一流。
演奏技術だけであれば大をも上回る才能の持ち主です。そして大に負けず劣らず、いつもピアノの練習をしています。
©石塚真一/小学館
そんな雪祈が、ジャズに真っ直ぐな大、そしてジャズ素人の玉田とバンドを組み、どう成長していくのか。という点にも注目してほしいです。
また雪祈については衝撃的な”ある事件”が起きます。ネタバレはしませんが、そのシーンまでぜひ『BLUE GIANT』を読み進めて下さい。
魅力4:大人の味
『BLUE GIANT』は青年漫画らしく、大人らしい味のある表現が随所に盛り込まれます。
ここでは例として2つのシーンをご紹介します。
兄貴からのプレゼント
主人公の大は同じサックスをとても大切に使ってます。
そのサックスは、大の兄が初任給の残高12万7000円を握りしめて楽器屋に行き、大にプレゼントしたものです。
楽器屋で一番高い51万6000円のテナーサックスを36回払いのローンで購入したのです。
©石塚真一/小学館
そのサックスを大は大切に大切に使い込みます。
母親を亡くした大にとって、兄は二人目の父のような、そんな存在。大の兄貴は、自分は佃煮の入ったおにぎりを昼飯に食べ、初任給のお金は大と妹のためにファミレスで好きなものを食べさせるような、そんな弟&妹思いの兄なのです。
師匠への授業料
大にはジャズの師匠がいます。名前は由井(ゆい)。一見、酒飲みのおじさんですが、過去には渡米しジャズに没頭していた経験があり、現在は音楽教室などを開いています。
そんな彼は大の才能に惚れ込み、無料で大にサックスの指導を続けます。
師匠は本来、1回のレッスンにつき5000円の月謝をもらって商売をしています。しかし大には月の半分、つまり月に15回ものレッスンをしていますが、全て無償で行うのです。
そんな折、大の父がその事実を知り、師匠のもとを訪れますが、師匠はレッスン代の受け取りを拒否します。そして大からレッスン代の事について聞かれた際に答えたのが
©石塚真一/小学館
「10年後……ポルシェ」
その一言でした。師匠の粋な一言に震えた読者も多かったことでしょう。
魅力5:迫力の演奏シーン
『BLUE GIANT』といえば迫力満点の演奏シーンも魅力です。
©石塚真一/小学館
音の聞こえない漫画で音楽を描くのは非常に難易度が高く、それゆえに名作となりきれなかった音楽漫画も数知れません。
そんな困難な表現にチャレンジした上で、見事にハードルを超えているのが『BLUE GIANT』の素晴らしい所です。
特に大の演奏シーンは、彼が標榜する「強い演奏、強いジャズ」を見事に表現できているように見えます。
ビリビリと見るものの魂を震わせるような音圧が、見るものに伝わるようです。
魅力6:目標に対する誠実さ
『BLUE GIANT』の6つ目の魅力は、主人公・大の目標に対する誠実さにあります。
©石塚真一/小学館
彼は事あるごとに「世界一のサックス奏者になる」という目標を公言します。そして、大の全ての行動や言動はその目標から逸れる事がありません。
目標に対する誠実さこそ、宮本大の魅力であり、『BLUE GIANT』の魅力なのです。
そして『BLUE GIANT』の魅力として挙げられるのは、大に関係する人が大の目標を聞いて笑わない事です。
特に印象的なのは、ドイツで出会ったクリス。
お金の無い大の事を家に泊めてあげて、そして初ライブの手配と集客まで手伝ってくれた、大のヨーロッパでの初の友人です。
クリスは大の目標を聞いても決して笑う事はなく、真摯に応援します。大が目標に対して誠実だからこそ、クリスのように誠実に大の事を応援してくれる仲間も増えるのです。
終わりに
いかがでしたでしょうか?
『BLUE GIANT』の魅力にハマっていただければ幸いです。
最後にもう一度、原作漫画の紹介をさせていただきますね。まだ読んだことが無い方や単行本を購入してない方はぜひ購入してみてください。また、電子書籍ストアのコミックシーモア、BookLive!、ebookjapanでは初めての方は半額クーポンを貰えます。
BLUE GIANT
あらすじ
ジャズに心打たれた高校3年生の宮本大は、川原でサックスを独り吹き続けている。雨の日も猛暑の日も毎日毎晩、何年も。
「世界一のジャズプレーヤーになる…!!」
努力、才能、信念、環境、運…何が必要なのか。無謀とも言える目標に、真摯に正面から向かい合う物語は仙台、広瀬川から始まる。
BLUE GIANT SUPREME
あらすじ
止まるわけにはいかない宮本大は、単身ヨーロッパに渡る。
降り立ったのはドイツ・ミュンヘン。伝手も知人もなく、ドイツ語も知らず、テナーサックスと強い志があるだけだ。
「世界一のジャズプレーヤーになる・・・!!」
練習できる場を探すところから始まる挑戦。大の音は、欧州でも響くのか――