すごい漫画が発売された。名前は『ひゃくえむ』。
マガジンポケットで連載されている、陸上の100m走を描いた漫画。
これは2019年に発売される漫画でナンバーワンになる。少なくとも私にとってはナンバーワンだ。
もしかしたら「このマンガがすごい!」や「漫画大賞」に選ばれるような漫画ではないかもしれない。それでも私はこの漫画がナンバーワンだと伝えたい。このブログでは、『ひゃくえむ』の素晴らしさを書いてみたい。
作者:魚豊
出版社:講談社
第1話に描かれる圧倒的熱量
まずは第1話だけでも読んでみてほしい。この漫画で描かれる圧倒的な熱量の前に、あなたの心がどう動くのかを確認してほしい。
この漫画の序盤に登場する人物はたった2人。
100m走が日本一速いトガシと、転校生で足が遅い小宮。
生まれつき足の速いトガシは、全国で1番足が速い。100m走さえ速ければ「たいていのことは解決する」と考えている。
生まれつき足の遅い小宮は、足が遅いけれど何故か河川敷を1人で走っている。走ったって何も解決しない事は分かっていながら、現実がツラいから走っていた。
そんな二人が出会った。
学校では尊敬されているトガシ。学校では「オバケ」と呼ばれ蔑まれている小宮。
そんな二人が出会った。
(小宮)「今からでも速くなれるかな?」
(トガシ)「…いや、それを決めんのは君だろ」
(小宮)「決めるのは…僕…」
ここから二人の物語が動き出す。
持つ者と持たざる者の対比
この漫画は「トガシと小宮」という二人の対比を中心に描かれる。
トガシは生まれつき足が速い「持つ者」。しかしトガシにも決定的に足りない物があった。
小宮は生まれつき足が遅い「持たざる者」。しかしトガシが持っていない「熱」を秘めていた。
トガシは足の遅い小宮に走り方を教える。小宮はそれをどんどん吸収していく。そして小宮の存在は、トガシに大きな影響を与えていく。
『ひゃくえむ』で描かれる二人の対比は、才能と熱量の対比でもある。
小宮の熱量が伝播したトガシ、トガシの才能が伝播した小宮。
まるで太陽と月のような二人の関係性が、「100m走」というシンプルな競技の中に閉じ込められる。
1位を取るということ
『ひゃくえむ』には重要な視座がある。
それは1位を取るものは1人であるということ。
当たり前だろう。と言われたらそれまでかもしれない。
でも、これは1位になった者にしか分からない感覚でもある。
「100mだけ誰よりも速ければ、全部解決する」
というトガシの言葉は、1位の人間にしか口に出来ない言葉だ。
そしてこの言葉はおそらく、トガシ自身にいつか跳ね返ってくる言葉でもある。
追われる恐怖、転落する恐怖。その恐怖の相手は、自分が走り方を教えてあげた小宮かもしれない。
月と太陽が同時に1位を取る事は、100m走では許されない。
『ひゃくえむ』は、そういう漫画だ。
100m走に熱量を込めて描くということ
『ひゃくえむ』は非常に難しいことにチャレンジしている漫画でもある。描かれる競技は、人が100mを全力疾走する。それだけの競技だからだ。
派手なオーバーヘッドキックも無ければ、ブザービートを描くことも出来ない。メガネくんのドラマチックなスリーポイントだって描けない。
ただ懸命に100mを走る。ただそれだけを漫画として熱量を込めて描く。
私は漫画家ではないけれど、その難易度は十二分にわかるつもりだ。
しかし100m走に命をかけている選手がいるように、この100m走漫画には技術やドラマが詰まっている。技術だけではダメ、才能だけではダメ、熱量だけではダメ。
それは100m走だけではなく、あらゆる活動に共通することなのではないだろうか。
『ひゃくえむ』の作者は、100m走を通じて、トガシと小宮を通じて、あなたの心に火をつけようとしている気がしてならない。
この漫画から火を受け取るかどうかは、アナタ次第だ。
作者:魚豊
出版社:講談社
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